バリー・ランセット氏の日本との出会いは30年以上前にさかのぼる。きっかけは彼のカリフォルニアから東京への実験的な小旅行だった。吸い寄せられるように東京へ舞い戻ったのはその5年後で、これが思いがけず長い滞在になるとは当時想像だにしなかった。
その後、大手出版社の編集者となったランセット氏は、勤務していた25年の間に数多くの本の編集に携わった。さまざまなジャンルの英文出版を手がけた中で、最も多かったのが日本文化についての本。芸術、工芸、料理、歴史、小説、禅庭園、武道、東洋思想など彼が作った本は、アメリカやヨーロッパを中心として世界中で発売された。この仕事を通して、ランセット氏は日本の伝統的な世界に触れることができ、その貴重な経験が現在の彼の小説に生かされている。
実は、ある一つの出来事が彼を執筆活動へとうながしたことはあまり知られていない。まだ新婚時代のある日、ランセット氏は警官2人に突然、警察署まで任意同行を求められた。そして犯罪にも値しないほどの小さなミスをめぐって、彼はそこで3時間も取り調べを受けたのだった。
警察の執拗な尋問は、日本に滞在していた中で最も精神的な消耗戦を強いられるイタチごっこに発展。これにより、彼はそれまでの経験をすべて新しい光の下で見直さざるを得なくなった。この体験こそ、彼が創作をする上で根源的な事件となった。
『ジャパンタウン』はジム・ブローディを主人公とするシリーズの1作目で、2作目は現在すでに編集段階に入っている。海外翻訳の出足も快調で、ドイツ・ブルガリア・ロシア・イスラエルでの出版が決まっている。
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よくあるご質問
(翻訳・浦田未央)